脳血管障害や頭部外傷などが原因で、大脳の言語中枢が損傷されると「失語症」が後遺症として残る場合があります。 失語症になると「聞く」「話す」「読む」「書く」「計算」が障害され、今まで意識することなく行っていたコミュニケーションが急に難しくなります。意思や感情をことばで伝達することが難しくなるだけでなく、ことばを使って物事を考えることも困難になります。 このような症状を持つ方に対して、コミュニケーション能力の回復を目的とした言語機能訓練を行い、ご家族へのコミュニケーション方法についてのアドバイスや代償手段の検討など行います。
<失語症主な症状>
○言おうとしている言葉が出てこない。
○聞いていることばが理解できない。
○話が通じない。
○文章の内容が理解できない。
○書こうとしている文字が書けない。等
脳血管障害や進行性疾患、変性疾患等が原因で、口唇や舌・声帯・呼吸器など話すために必要な器官が障害されると、声が出せなくなったり、ろれつが回らないなど話しにくくなります。これを「構音障害」と言います。また、構音障害には嚥下障害を合併することがあります。 このような症状を持つ方に対して、口唇や舌の運動や呼吸・発声練習、構音練習などを行い、機能の回復を目指すとともに、残存機能を最大限に活用し、機能維持を図ります。また、発話が難しい方にはコミュニケーションの代償手段の導入を検討し、日常的のコミュニケーションのQOLを確保します。
<構音障害の主な症状>
○ろれつが回らず、発音がはっきりしない。
○声が出にくい、ガラガラする。等
食物を咀嚼・嚥下(飲み込む)することが困難になることを「摂食・嚥下障害」と言います。それに伴い、食事中の誤嚥や窒息のリスクが高まります。
誤嚥: | 食べたものが気管に入ってしまうこと。 気管から肺に入ると誤嚥性肺炎の原因になります。 |
窒息: | 食べたものが気管に詰まり呼吸ができな くなってしまうこと。 |
当院では、「嚥下造影検査」(V-F: 食物が口から食道に入るまでの動きをレントゲン撮影で連続的に記録する検査)を医師、歯科医師、看護師、診療放射線技師、管理栄養士、言語聴覚士が協力して行っております。
その結果に基づいて、治療方針や経口摂取についての検討、食事形態や食べる時の姿勢などの工夫をはかり、摂食・嚥下リハビリテーションへと進めていきます。
<接触・嚥下障害の主な症状>
○食事中にむせたり咳き込んだりする。
○食べ物が口からこぼれる。
○口の中に食べ物が残っている。
○痰が増える。
○発熱をくり返す。
○体重が減る。
高次脳機能障害とは、脳損傷によっておこる記憶・注意・遂行機能・失語・社会的行動障害等の障害の総称です。これらに問題が起こると、日常生活や社会生活において様々な支障をきたします。
また、高次脳機能障害は身体の障害を伴わない、また本人の自覚が乏しいことが多く、一見しただけでは判別がつかないこともあります。社会復帰後に作業能力の低下などを、初めて第三者から指摘されるケースも少なくありません。
当院では以下のような各種神経心理学検査を取り揃え、それぞれに応じた検査を積極的に行っております。標準化された検査を適切に複数実施することにより、その方の高次脳機能障害の全体像や程度を理解することができます。それによって適切なリハビリテーションにつなげるとともに、ご家族や周囲の方への症状説明,日常生活を送る上での工夫や助言,社会生活に復帰する際の様々な援助を行っています。
<各種検査>
SLTA(標準失語症検査)
CADL(実用コミュニケーション能力検査)
VPTA(標準高次視知覚検査)
ITPA(言語学習能力診断検査)
AMSD(標準ディサースリア検査) 等
<高次脳機能障害の主な症状>
記憶の障害―名前が覚えられない、用事を忘れるなど
注意の障害―見落としや単純ミスが多い、集中力が続かない、切り替えができないなど
遂行機能の障害―臨機応変に対応できない、見通しがたてられないなど
社会的行動障害―無気力、感情の抑制が難しい、場にふさわしい行動が取れないなど