診療科案内・・・がん、神経筋疾患、重症心身障害、呼吸器など質の高い診療機能を備えた診療科

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睡眠外来では、小児から大人の患者様の睡眠に関連する疾患の診療を行っています。

[大人の睡眠外来]

診療可能な疾患

 ① 睡眠呼吸障害
 ② ナルコレプシー、特発性過眠症
 ③ レム睡眠行動障害

当科ではこれまでにも睡眠呼吸障害の専門的な治療を行ってきました。なかでも睡眠時無呼吸症候群は(Sleep Apnea Syndrome;SAS)は最も多い睡眠呼吸障害です。

SASは肥満の人に多いといわれていますが、肥満だけでなく扁桃肥大や小顎症、舌の肥大など様々な原因があります。これらを背景として睡眠時のいびき、無呼吸が見られ、睡眠時に無呼吸、低呼吸が起こるために夜間の睡眠が分断され、頻回に中途覚醒が生じます。その結果、朝起きてもすっきりせず、日中の眠気が残り、ぼーっとしている状態になります。これらを放置しておくと日中の眠気のためにADLが低下するだけでなく、糖尿病、高血圧、虚血性心疾患、脳血管障害などの重大な病気の発症要因となります。重症のSAS患者さんは生命予後が悪いことが明らかになっており、早めに治療することが脳血管疾患、心血管疾患の予防のためにも重要です。

睡眠時無呼吸症候群の診断は、一泊入院による、ビデオモニタリングPSGにより行います。ビデオモニタリングによって睡眠時のいびき、無呼吸、喘ぎ呼吸などを確認することが可能です。

睡眠時無呼吸症候群と診断された患者さんには、第一選択であるCPAP治療を行っています。その他のマウスピース治療や耳鼻科的治療につきましては歯科や耳鼻科と協力して診療を行っています。

ナルコレプシーや特発性過眠症は、若い人に多い病気で男女差はありません。夜間十分な睡眠をとっているにもかかわらず、日中の眠気により授業中やテストのとき、仕事中に居眠りをして日常生活に支障をきたします。病気だと認知されず、やる気がない、さぼっていると周囲から見られてしまうこともあります。

ナルコレプシーや特発性過眠症の診断は、睡眠日誌を書いていただき、毎日の睡眠状態を確認した上で、夜間の睡眠ポリグラフ検査と日中の反復睡眠潜時検査を行います。診断された場合は主に投薬による治療を行います。

レム睡眠行動障害は夜間夢と同じ行動をして、大声で叫んだり、人を殴ったり、蹴ったりする症状の病気です。本人がけがをするだけでなく、隣で寝ている家族もけがをしてしまうことがあります。

診断は、入院で夜間のビデオモニタリングPSGにより、異常行動を確認することで行います。

レム睡眠行動障害は、パーキンソン病や、レビー小体認知症、多系統萎縮症などの神経変性疾患の前兆であるといわれ、これらの疾患を発症することが多いです。これらの神経変性疾患については当院神経内科医師と協力して診断、治療にあたっています。

これらの睡眠に関連する疾患はいずれも放置すると危険なものです。疑わしいと思われたら、お気軽にご相談ください。

医師紹介

田中小百合
【所属学会・研究会等】
日本睡眠学会(総合専門医)




[小児の睡眠外来]

※ 対象は中学生以下のお子様です。高校生以上のお子様は内科が担当いたします。また、うつ病、統合失調症、不安神経症などの精神疾患に関連する不眠症や過眠症は当科の対象外となります。

主な疾患・症状・診療内容

① 不眠症(乳幼児の夜泣きを含む)

寝つきが悪かったり、夜中に何度も目を覚ますお子様が対象です。睡眠環境、発達特性、体内時計の乱れ、各種身体疾患(アレルギー、呼吸器、神経、耳鼻科疾患)など、さまざまな原因があります。乳幼児は夜泣きをするものですが、耐え難いレベルの夜泣きが続くと、親子とも疲弊し、日中の機能障害につながりかねません。「日々困っている」場合は、お気軽にご相談ください。対応が難しいケースでは、他の専門施設と連携して治療を行います。

② 睡眠関連呼吸障害群

代表疾患:閉塞性睡眠時無呼吸症候群、中枢性睡眠時無呼吸症候群
睡眠中に呼吸がくり返し止まったり浅くなったりする疾患です。多くは閉塞性睡眠時無呼吸症候群で、小児では口蓋扁桃やアデノイド(咽頭扁桃)肥大、肥満が原因となることが多いです。大人では日中の眠気を訴えることが多いですが、子どもでは主に注意力散漫、多動、興奮、攻撃性などの行動障害が見られます。終夜睡眠ポリグラフ検査(PSG)で診断し、手術が必要な場合は耳鼻科や麻酔科と連携して治療します。

③ 中枢性過眠症群

代表疾患:ナルコレプシー、特発性過眠症、Kleine-Levin症候群
日中の強い眠気は、単に睡眠不足の場合もありますが、「十分な睡眠時間を確保しても昼間いつも眠くなる」場合は、過眠症の可能性があります。問診で中枢性過眠症が疑われた場合は、まずPSGで夜間の睡眠を評価し、翌日に反復睡眠潜時検査(MSLT)で日中の眠気を評価します。当科では、処方に登録が必要な過眠症の治療薬であるモダフィニル(商品名モディオダール)やメチルフェニデート(商品名リタリン)の処方が可能です。

④ 概日リズム睡眠・覚醒障害群

代表疾患:睡眠・覚醒相後退障害、睡眠・覚醒相前進障害、不規則睡眠・覚醒リズム障害
 いわゆる「体内時計の乱れ」です。睡眠日誌を参考に診断します。小児では睡眠・覚醒相後退障害が多く、小中学生の「朝起きられない」原因となり、不登校につながる例も少なくありません。自律神経やホルモンの乱れを伴うことも多く、生活指導(光療法、運動、食事)と内服薬が効果的です。入院治療が必要な場合は他の専門施設へご紹介します。

⑤ 睡眠時随伴症群

代表疾患:ノンレム睡眠関連睡眠時随伴症群(睡眠時遊行症、睡眠時驚愕症、錯乱性覚醒など)
 小児ではノンレム睡眠関連睡眠時随伴症が多く見られます。夜中に突然起きて徘徊したり(睡眠時遊行症:夢遊病)、泣き叫んだり(睡眠時驚愕症:夜驚症)します。問診で大まかに診断可能ですが、てんかん発作やレム睡眠行動異常症との鑑別が必要な場合は、脳波やPSGを実施します。環境調整で改善しない場合は内服治療を行います。

⑥ 睡眠関連運動障害群

代表疾患:レストレスレッグス症候群(むずむず脚症候群)、周期性四肢運動障害
小児ではレストレスレッグス症候群が多く見られます。夜間を中心に、下肢に異常な感覚や動かしたい衝動が出現し、動かすと一時的に楽になりますが、安静にすると再燃するため、入眠困難につながります。鉄欠乏や神経疾患、心疾患、腎疾患との関連も指摘されています。

⑦ 神経発達症(発達障害)、てんかん患者の睡眠問題

神経発達症やてんかんの小児は、睡眠に問題を抱えやすいことが知られています。逆に、睡眠の問題は、神経発達症の症状や、てんかん発作を悪化させることが知られています。担当医は睡眠のほか、小児神経とてんかんの専門医でもあり、併存疾患も考慮しながら、総合的なQOL(生活の質)向上を目指した睡眠診療を行っています。


近年、スマートフォンやSNSの普及、共働き世帯の増加など、子どもを取り巻く環境は急速に変化し、良質かつ十分な睡眠を確保できない子どもが少なくありません。睡眠に問題がある状態が続くと、脳機能の低下、発達や成長の問題、自律神経の乱れ、自尊心の低下、家族や友人関係の悪化などを招く恐れがあります。幸いにも、睡眠の重要性が再認識されつつありますが、子どもの睡眠については未解明な点も多く、「これをすれば必ず良くなる」と断言できるケースは少ないのが現状です。また、多くの神経疾患同様、簡単に治癒するものではなく、根気強い対応が求められます。睡眠外来を通じて、お子様の健やかな成長をサポートできれば幸いです。気軽な相談相手として、QOL向上に寄与する睡眠医療を提供できるよう努めております。該当する症状でお困りの際はどうぞご相談ください。(完全予約制)

睡眠日誌について

睡眠状態を把握するため、受診前に睡眠日誌の記載をお願いしております。以下のリンクよりダウンロード・印刷していただき、受診日までの記録をお願いいたします。

  睡眠日誌[PDF]
可能な検査

PSG(終夜睡眠ポリグラフ検査)
MSLT(反復睡眠潜時検査)
脳波

医師紹介

矢﨑 耕太郎
【専門分野】
小児神経学
【所属学会・研究会等】
日本小児科学会(専門医・指導医)
日本小児神経学会(専門医)
日本てんかん学会(専門医)
日本睡眠学会(総合専門医)
日本臨床睡眠医学会