結核の薬について (奈良医療センター薬剤部)
令和4年4月1日

結核菌

結核菌は、分裂増殖を活発にする菌、時折分裂増殖を行う菌、分裂増殖がほとんど行われない菌に分かれると推測されています。
治療に複数の薬剤を用い、できるだけ早く活発に分裂増殖菌を減少させ、菌量を低くして維持療法を行うことが、治癒および再発防止に有用です。なお、休止菌を殺菌することはできません。

菌種 活動性
分裂増殖菌 急速に増殖している細胞外菌で、イソニアジドが良く効き、殺菌的に働く。リファンピシンやストレプトマイシンも有効。
半休止菌 緩徐に増殖する半休止期の細胞外菌にはリファンピシンが最も殺菌的に働く。
酸性環境下にあり緩徐に増殖する半休止期の細胞内菌にはピラジナミドが最も効果的に殺菌的に働く。
休止菌 発育に不利な環境下に置かれると結核菌は顆粒状となり休止期に入る。抗結核菌薬は休止状態の菌には作用せず増殖を始めるまでは殺菌できない。


耐性菌

抗結核薬を単独で服用したり、飲んだりのまなかったりしていると、耐性菌を生じます。
中途半端な服薬や、自己判断による中断などしないようにしましょう。
イソニアジド、リファンピシンに耐性を持った菌を多剤耐性菌(MDR)といいます。
MDR結核の治療は24ヶ月以上に及ぶことがあります。

治療法
  1. 初期に多剤を併用し、多量の菌を殺菌しかつ耐性菌の出現をおさえます。
  2. 2~3ヶ月たつと半休止菌や休止菌ばかりが残り、この時期にはイソニアジドとリファンピシンで治療を行います。
  3. きちんと抗結核薬が内服できたら95%は再発しません。
  4. 初回治療でも6ヶ月から12ヶ月の期間が必要です。
主な治療薬
名称 写真 特徴 主な副作用
イソニアジド
(INH)
抗結核薬中最も強く、分裂増殖菌に対する殺菌作用がいちばん強い。耐性菌の出現はやや早い。
末梢神経障害(手足のしびれ、痛み等)、肝障害(全身のだるさ等)、発熱、発疹、食欲低下など
リファンピシン
(RFP)
結核菌に対して殺菌的にはたらく。半休止菌で緩徐に増殖する結核菌に最も殺菌的に作用する。比較的高い頻度で耐性菌が出現することが認められている。他の抗結核菌薬との交差耐性は認められていない。
肝障害(全身のだるさ等)、発疹、血液障害、胃腸障害など.
エタンブトール
(EB)
結核菌に静菌的に作用する。イソニアジド、リファンピシンの両剤への耐性獲得を防止する。
視力障害、色覚異常
ピラジナミド
(PZA)
  半休止期の菌に殺菌的に作用する。イソニアジドと併用して耐性獲得を遅らせる。
肝障害、腎障害、
飲み忘れたとき

その日のうちに気づいたら直ちに服用する。翌日に気がつけば前日ののみ忘れ分は内服せず従来通り服用を続ける。