国立病院機構奈良医療センター てんかんセンターは、奈良県におけるてんかんに関わる診療科が連携して包括的かつ円滑な診療や奈良県内のてんかんの教育・研究を行うことを目的に開設しました。奈良県立医科大学附属病院と連携して①検査、②診断、③薬物、外科治療を行い、充実した社会生活を支援することを目的としています。
「てんかん診療拠点機関」は、てんかん診療を専門とする医師が在籍し、MRIやビデオ脳波などの必要な検査が可能であること、などの要件を満たす医療機関から、都道府県が指定します。当院は、2021年4月より奈良県のてんかん診療拠点機関に認定されました。
大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性におこる病気です。発作は、突然おこり、普通とは異なる身体症状や意識、運動、感覚の変化が生じます。そのため、突然、けいれんをおこしたり、奇妙な動き・つじつまのあわない行動がみられたり、意識を消失したり、見え方がおかしくなったりすることが発作性にみられます。
通常、大脳の神経細胞は、規則正しいリズムでお互いに調和を保ちながら活動しています。しかし、その活動が突然崩れて、その異常な活動にまきこまれた脳の部位が、上記のような様々な症状を引き起こします。
意識が突然なくなる、けいれんがみられる、奇妙な運動がみられる等の症状は、必ずしも、てんかんに限った症状ではありません。心臓疾患による失神・立ちくらみ・脳出血や脳梗塞・低血糖・不随意運動・睡眠時の行動異常等との鑑別が必要になります。原因によって、今後の治療の方向性も異なるため、鑑別が必要になります。
詳しい病歴の聴取の後、脳波検査・画像検査(主に頭部MRI。場合により、SPECT・FDG-PET・脳磁図などを追加することがあります)を中心に鑑別を行っていきます。脳波検査は特に重要で、てんかん放電の有無を確認します。通常、外来で行われる脳波検査は1時間未満の記録のため、十分な情報がえられないことがあります。そのような場合は、入院にて、昼夜を通じて数日間、ビデオと脳波の同時記録をする長時間ビデオ脳波モニタリング検査を行います。当院では、特に、この長時間ビデオ脳波モニタリング検査システムを充実させています。
てんかんにも、多くの種類があります。年齢とともに発作回数が自然に減少・治癒するものもあれば、抗てんかん薬を使用しても、なかなか発作が抑制されないものまで様々のタイプがあります。発症年齢・脳波のてんかん放電の特徴・画像診断・治療への反応により、どのタイプのてんかんかを推定し、よりそのてんかんに適した治療を行う必要があります。
一般的には、てんかんの治療は、まず、抗てんかん薬の内服から開始します。現在、20種類以上の抗てんかん薬がありますので、それぞれのてんかんの発作のタイプにあった治療を行うことになります。乳児期に発症する点頭てんかんについては、ACTH療法を行ったり、自己免疫性疾患にともなうてんかんについては、ステロイドや免疫抑制剤を使用することがあります。
抗てんかん薬を組み合わせる治療が一般的ですが、数種類試しても、発作の改善が得られないときには、てんかん外科手術を考慮することがあります。ただ、全例がその適応になるわけではありません。難治に経過する場合、当院では、てんかんカンファレンスで今後、どのような治療選択をおこなっていくか、話し合うという方法をとっています。
また、難治てんかんの中には、ケトン食療法(体内でケトン体が多く産生されるように、脂肪の比率を高めた食事)を行うこともあります。
小児期発症のてんかんの場合、発達や行動面に問題がみられることがあります。また、成人の場合も、経年的に知能の低下がみられる場合や、情緒の問題がみられることがあります。定期的に、神経心理検査で、発達・知能の評価をしたり、抑うつ傾向等について評価できるように、臨床心理士による介入も行っています。
学校生活や就業において、安全を確保しつつ、できるだけ、制限を少なくし、適応しやすくするための工夫は大切なことだと思っています。また、運転免許についても、発作の抑制の程度と法律の規定に基づいて、考慮する必要があります。妊娠・出産・授乳に関しても、計画的に行う必要があります。診療・相談を通じて、そのようなことができる体制を整えています。
部門 | 氏名 |
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脳神経外科 | 平林 秀裕、永田 清、下川原 立雄、開道 貴信、田村 健太郎、佐々木 亮太 |
脳神経内科 | 木下 真幸子、小原 啓弥 |
小児神経科 | 澤井 康子、榊原 崇文 |
看護部 | 大谷 尭正、田中 ありさ(コーディネーター) |
リハビリテーション科 | 森 将貴、中西 絢、梅景 洋介、小笠原 則子、阪部 浩一 |
臨床心理士 | 東 奈緒子、坂東 和晃 |
臨床検査部 | 枦山 武寛、明賀 幸敬、延命 孝也、中垣 則子、福島 茂樹、南出 由布子、安田 凪冴 |
認定脳波技師 | 大杉 奈保美、山田 翔子 |
地域医療連携室 | 東原 直輝、辻 友博(コーディネーター) |
薬剤部 | 朝日 信一、福田 祐子、三嶋 美穂 |
放射線科 | 前川 則彦 |
管理栄養科 | 上ノ町 かおり、田中 理恵 |
月 | 火 | 水 | 木 | 金 | |
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小児 | 澤井 康子 (午後) |
澤井 康子 (午後) |
榊原 崇文 ※第4木曜は午前のみ |
澤井 康子 (午前) |
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成人 | 永田 清 |
田村 健太郎 | 開道 貴信 |
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佐々木 亮太 | 木下 真幸子 (第1・3週) |
診察は完全予約制になっています
ご本人・ご家族から当院へのお電話でのお申込み
TEL:0742-45-1563 (8:30~17:00)
紹介状がなくても予約できます。その場合、「特定療養費」として別途費用が掛かりますので、ご了承ください。
他医療機関からの申し込み
当院のホームページに初診予約申込書をダウンロードして頂き、FAXをお願いいたします。
予約日を調整して連絡させて頂きます。
当院では脳波・CT・MRIの他、入院による長時間ビデオ脳波モニタリング検査、心理検査等を実施しています。
てんかんは日本では精神保健福祉法に基づき、法的に支援することが位置づけられています。また、公費負担制度とは別に医療保険の制度、税金の医療費控除などのさまざまな助成制度があります。
自立支援医療費制度 | |
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対象者: | てんかんと診断された人 |
対象となる医療費: | 指定された医療機関(原則1ヶ所)の外来受診のみで利用可能。保険適用されている外来でのてんかんに関わる診断、検査、薬などの医療費が原則1割負担となる。 |
申請方法: | 所定の申請書と診断書及び保険証の写し(同じ医療保険加入者全員分)、課税証明書など所得が確認できる書類を住んでいる市町村窓口に提出する。 |
有効期限: | 1年間。引き続き利用する場合は更新手続きが必要。 |
利用者負担: | 原則1割。ただし、世帯の市町村民税の課税額や病状等に応じて窓口での支払いに上限額がある。 |
精神障害者保健福祉手帳 | |
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てんかんの場合は、以下に示す①~④の発作の頻度を基準に、等級が定められています。 ① 意識障害が起き、状況にそぐわない行動を示す発作。② 意識障害の有無に関わらず転倒してしまう発作が月に1回以上あらわれ、常時介護が必要な場合 ③ ぼーとしてじっと動かなくなってしまい、意識を失ってしまうが倒れない発作 ④ 意識がはっきりしているが、意図した動きができない発作。 |
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1級 | 上記で述べた①と②の発作が月に1回以上あらわれ、常時介護が必要な場合。(日常生活を1人で送ることができない) |
2級 | 上記の①または②の発作が年に2回以上おこる場合。③または④の発作が月に1回以上あらわれる場合。(日常生活を送るうえで援助が必要) |
3級 | 上記の①または②の発作が年に2回未満おきる場合。③または④の発作が月に1回未満おきる場合。(日常生活や仕事など社会生活に制限を受けている状態) |
申請方法:市町村の担当窓口
有効期限:2年(引き続き利用する場合は更新手続きが必要)
申請に必要なもの:申請書・診断書又は、精神障害による障害年金を受給している場合、その証書の写し・本人の写真・同意書
障害基礎(厚生・共済)年金 | |
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対象者: | 定められた条件を満たしている人 |
申請窓口: | 市町村(基礎年金) |
申請方法: | 所定の申請書と診断書及び保険証の写し(同じ医療保険加入者全員分)、課税証明書など所得が確認できる書類を住んでいる市町村窓口に提出する。 |
申請時期: | ①障害認定日(原則として初診日から1年6か月後)に請求を行う。 |
てんかんカンファレンス |
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開催日:毎月第1木曜日 17:30~ 場所:病院3階さくら講堂 *難治性てんかん症例について、検討するカンファレンスです。 検討を要する症例がありましたらご相談下さい。(連絡先 小児神経科 澤井) |