てんかんセンター

TEL0742-45-4591(代)  奈良医療センター >> 

 

TEL 0742-45-4591(代)

てんかんは、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性に起こる脳の疾患で、発作は突然に起こり、普通とは異なる身体症状や意識、運動および感覚の変化をきたします。例えば「全般性強直間代発作」では多くの場合、意識がなくなり、全身が硬くなった後(強直相)、全身をガクガクとさせます(間代相)。症状が軽い場合には、一方の腕や顔の一部だけが数秒間だけ固くなるだけの方もいます。また、突然反応がなくなり数秒間だけ宙をみつめるのが発作の症状の方では、転倒したりけいれ んしたりすることもなく、他者からは気づかれないものなど多彩な症状を示すこともあります。かのシーザー、ドストエフスキー、南方熊楠もこの病気に苛まれていました。現在では、日本人1000人中5〜8人 (60万〜100万人)の患者がいるとされています。その原因には構造性、素因性、感染性、代謝性、免疫性、および原因不明と多岐に渡り、小児科、精神科、脳神経内科、脳神経外科など数多くの診療科により担われてきましたが、多くの地域で、どの医療機関がてんかんの専門的な診療をしているのか把握されていない状況が生まれているといわれています。また、一般の医師へのてんかん診療に関する情報提供や教育体制は未だ整備されてはいないなど、てんかん患者が地域の専門医療に必ずしも結びついていないとの指摘もあります。このような現状を踏まえ、2018年から「てんかん地域診療連携体制整備事業」が始められました。  
奈良県では、県を事業主体とし、県連携拠点病院である奈良県立医科大学とてんかん診療拠点機関の指定を受けた当院が、協力して事業を進めることとなりました。てんかん診療拠点機関の業務は、  
 
①てんかん患者及びその家族への専門的な相談支援及び治療   
②管内の医療機関等への助言・指導   
③関係機関(精神保健福祉センター、管内の医療機関、保健所、市町村、福祉事務所、公共職業安定所等)との連携・調整   
④医療従事者、関係機関職員、てんかん患者及びその家族等に対する研修の実施   
⑤てんかん患者及びその家族、地域住民等への普及啓発活動

です。当院は、2010年にてんかんセンターを開設し、全国で700余名しかいない「てんかん専門医」6名(非常勤医を含む)が、県内外のてんかん患者さん、外来患者年間4758人、ビデオ脳波モニタリング年間107件の診療を行い、毎月1回、県内のてんかん診療に興味を持つ医療従事者が集まり、難治例の検討会を実施。また各種研修会や市民公開講座によるてんかんの啓蒙活動などを行なってまいりました。今回の事業では、てんかん患者さんや家族への医療のみならず、運転免許、就学・就労といった生活福祉の相談や周囲の人々に対する「てんかん」に対する理解を深めてもらうことが重視されており、「てんかんコーディネター」の役割が、期待され、重要です。当院は、これまで障害者医療・福祉で培った経験をコーディネーター業務に生かし、「てんかん患者さんを治し、支える医療」を実践してまいりたいと思います。

令和3年
独立行政法人国立病院機構
奈良医療センター
院長  平林 秀裕