てんかんという病気
てんかんは脳の病気であり、大脳の神経細胞が過剰に興奮するために、脳の発作性の症状が反復性におこる病気です。発作は、突然おこり、普通とは異なる身体症状や意識、運動、感覚の変化が生じます。そのため、突然、けいれんをおこしたり、奇妙な動き・つじつまのあわない行動がみられたり、意識を消失したり、見え方がおかしくなったりすることが発作性にみられます。
通常、大脳の神経細胞は、規則正しいリズムでお互いに調和を保ちながら活動しています。しかし、その活動が突然崩れて、その異常な活動にまきこまれた脳の部位が、上記のような様々な症状を引き起こします。
てんかんと鑑別・区別が必要な疾患
意識が突然なくなる、けいれんがみられる、奇妙な運動がみられる等の症状は、必ずしも、てんかんに限った症状ではありません。心臓疾患による失神・立ちくらみ・脳出血や脳梗塞・低血糖・不随意運動・睡眠時の行動異常等との鑑別が必要になります。原因によって、今後の治療の方向性も異なるため、鑑別が必要になります。
てんかんの診断は具体的にどのように行うか
詳しい病歴の聴取の後、脳波検査・画像検査(主に頭部MRI。場合により、SPECT・FDG-PET・脳磁図などを追加することがあります)を中心に鑑別を行っていきます。脳波検査は特に重要で、てんかん放電の有無を確認します。
通常、外来で行われる脳波検査は1時間未満の記録のため、十分な情報がえられないことがあります。そのような場合は、入院にて、昼夜を通じて数日間、ビデオと脳波の同時記録をする長時間ビデオ脳波モニタリング検査を行います。当院では、特に、この長時間ビデオ脳波モニタリング検査システムを充実させています。
てんかんの分類
てんかんにも、多くの種類があります。けいれんをおこすものから、短時間ボーっとするものまで様々です。年齢とともに発作回数が自然に減少・治癒するものもあれば、抗てんかん薬を使用しても、なかなか発作が抑制されないものまで様々のタイプがあります。発症年齢・脳波のてんかん放電の特徴・画像診断・治療への反応により、どのタイプのてんかんかを推定し、よりそのてんかんに適した治療を行う必要があります。
てんかんの治療
一般的には、てんかんの治療は、まず、抗てんかん薬の内服から開始します。現在、20種類以上の抗てんかん薬がありますので、それぞれのてんかんの発作のタイプにあった治療を行うことになります。乳児期に発症する点頭てんかんについては、ACTH療法を行ったり、自己免疫性疾患にともなうてんかんについては、ステロイドや免疫抑制剤を使用することがあります。
抗てんかん薬を組み合わせる治療が一般的ですが、数種類試しても、発作の改善が得られないときには、てんかん外科手術を考慮することがあります。ただ、全例がその適応になるわけではありません。難治に経過する場合、当院では、てんかんカンファレンスで今後、どのような治療選択をおこなっていくか、話し合うという方法をとっています。
また、難治てんかんの中には、ケトン食療法(体内でケトン体が多く産生されるように、脂肪の比率を高めた食事)を行うこともあります。
てんかんに併存する問題
小児期発症のてんかんの場合、発達や行動面に問題がみられることがあります。また、成人の場合も、経年的に知能の低下がみられる場合や、情緒の問題がみられることがあります。定期的に、神経心理検査で、発達・知能の評価をしたり、抑うつ傾向等について評価できるように、臨床心理士による介入も行っています。
てんかんと社会生活
学校生活や就業において、安全を確保しつつ、できるだけ、制限を少なくし、適応しやすくするための工夫は大切なことだと思っています。また、運転免許についても、発作の抑制の程度と法律の規定に基づいて、考慮する必要があります。妊娠・出産・授乳に関しても、計画的に行う必要があります。診療・相談を通じて、そのようなことができる体制を整えています。